企業が抱え込んでいるマネーは増加の一途です。企業の利益剰余金の積み上げ(内部留保)は、9/1法人統計によれば2016年度末時点に406兆円に達しました。
翌日の読売新聞『賃上げ、投資 ためらう企業』によれば、5年連続で過去最高を更新です。名目GDPの約7割に相当します。
ただ、 内部留保はあくまで株主のものだから、気前よく従業員に還元するわけにはいきません。 先行き不透明な中にあっては設備投資にも及び腰です。結局のところ、配当や自社株買いによる株主還元にチカラを入れてきました。 でも、株主還元にも黄色信号です。ここでは、自社株買いの状況を主に書きます。
自社株買いとは
株主還元策には、配当と自社株買いがあります。
配当とは、現金によって株主に利益を分配することです。株式は日々価格が変動しますが、配当として受けってしまえば利益確定するわけなので安心できます。リアルな現金なので飲み食いに使うなどして、利益を体感できます。
デメリットもあります。配当には税金が掛かります。受け取った配当を持て余すことになれば、再投資したくなるでしょう。でも税金が引かれた分、複利効果が低くなってしまいます。
自社株買いとは、発行主体である会社が自らの株式を買うことです。自分の尻尾を食べるようなものです。その何がメリット?株主にとっては配当に比べ間接的なメリットです。
自社株買いによって市場に流通する発行口数を減らします。その結果1株当たりの価値が高まり株価上昇が期待できます。
またバランスシートが圧縮されるのでROE(自己資本利益率)が上がるので、財務体質が好感され株価にもポジティブに働きます。
そして配当のデメリットであった税金が、自社株買いによっては生じません。長期投資にとっては配当は複利効果を下げ歓迎されません。物言う株主(アクティビスト)が自社株買いを積極的に経営者に働きかけるのもそのためです。
勢いが衰えてきた
アベノミクスによる株高は、自社株買いによって買い支えられてきた影響が大きいです。 ところが8/31日経新聞『株「株安」言えぬ経営者』によると、自社株の割高感が強まってきたようです。
記事によれば、国内企業の自社株買いの推移は、昨年に比べ今年2017年は8月時点で約4割減で3兆円に満たない水準です。自社株判断DIなる指標の2010年からの推移グラフも掲載されています。DIが低くほど割高感を経営者が持っていることを表します。2015年のアベノミクス絶好調の頃に底を打ったあと、昨年上がり、今年になって2015年の底と同じ水準となっています。
理由として記事では、
・日銀のETF買いによる不当な株高
・米トランプ政権の見通せていない
の要旨で述べられています。
特に1点目は気になります。日銀が良かれと思っての取り組みが、経営者にはネガティヴに成りつつあります。
自社株買いの勢いが衰えてきました。吹き溜まるマネーはどうなるのでしょう。
日経平均PERは13ポイント台で低迷しているのに経営サイドから割高感が出ている状況は警戒すべきと、記事を読みつつ感じました。
まとめ
確定拠出年金(401k,iDeCo,DC)の株式連動商品は配当に相当する分配金を出していないのがほとんどです。分配金による複利効果は期待できません。相場上昇が長期的に続くとは楽観できません。
結局のところ、売買(スイッチング)によって自らの意志で利益確定を繰り返しチャンスを作り出すしかありません。がんばりましょう!