ROE(自己資本利益率)が日本は低いといわれています。ROEとは、株主の持ち分である自己資本をもとに1年でどれだけの利益をあげたかを示す指標です。
投資家にとって、最終的にほしいのは「打ち出の小づち」。企業という小づちに「こら、金出せ~」と唱えれば利益を生み出してくれる仕組みに憧れます。
欧米ではROEが重視されるといわれ、それに対して日本は低くなんだか卑屈な思いにさせられることがしばしばです。
でも、ROA(総資産利益率)からみる日本は、意外と健闘しています。
ROAとROEは企業が利益を生み出す効率性を測る尺度
ROAとは、1年間に稼ぎ出した純利益を総資産で割って算出します。総資産とは、投資家が出資した自己資本と企業が借用金を活用して積み上げた設備や現金などの全財産です。
ROAもROEも、企業が利益を生み出す効率性を測る尺度です。
ROA=純利益÷自己資本
ROE=純利益÷総資産
ROAを諸外国と比較すると
9/2日経新聞『世界企業~日本の立ち位置~』によれば、2016年の主要企業のROA(総資産利益率)は、日本が米国をわずかながら8年ぶりに逆転しました。
2007年からの日本、米国、ドイツのROEとROAの推移グラフが当記事に掲載されています。
ROEは、1位米国、2位ドイツ、3位日本で、順位は不動です。
ROAは、どの年でも1位米国、3位ドイツで変わりありません。ただ、日本は2008年にトップでしたが、リーマンショックを境に最下位に沈んだあとは、上昇傾向が続き2016年にわずかながらトップに返り咲きました。
その理由として、当記事では、「財務テクニックに頼らず地道に取り組んできた構造改革が、成果を生みつつある」としています。
ROEは自己資本を自社株買いなどにより減らしても上昇します。分子である純利益が同じでも分母を減らすことで、見かけ上の効率性は改善するのです。ROAのほうが実態をより表すともいれれます。
この二つの指標は、次の式のようにも表せます。
ROA=売上高利益率×総資産回転率
ROE=売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ
「総資産回転率」とは売り上げのために資産をどれだけ上手く活用しているかを示します。総資産を自己資本で割って出す「財務レバレッジ」をROEには掛け合わせています。
当記事によれば、総資産回転率は日本が約0.6倍で、米国の0.3倍を上回ります。一方、財務レバレッジは、日本が約3倍と米国は4倍台より低い状況です。
ROEが低い日本に批判的な論調で書かれた記事をよく目にしますが、ROAからみれば、財務テクニックに頼らないまっとうな一面を当記事から感じました。
まとめ
ROAで日本は健闘しています。ただ、米国、ドイツとの相対比較です。当記事の推移グラフからは、実はROEとROAともに、直近2~3年は低下傾向であることが読み取れます。「稼いだ現金の使い道を見いだせていないことが背景にある」と記事では述べています。金融緩和の限界を感じさせる記事でもありました。