EUあってのドイツ、共同債が現実味でユーロ急騰!

株式相場の勢いがとまりません。

日経平均は2万3000円に迫るまで回復し2月の急落前の水準です。先物主導で危ういものの、非常事態宣言解除にともなう経済再開、ワクチン開発への期待を追い風になっています。

米国では人権問題で揺れる一方、雇用回復が株式相場を後押ししています。6/5発表の5月雇用統計では、減少予想であった非農業部門雇用者数が250万人増加のサプライズも加わり、NYダウは2万7000ドルを回復しました。

 

日本からは遠くなかなか見えずらいですが、欧州からの余波がじわりと世界の相場を下支えています。

5月中には116円まで円高が進んだユーロ円は、124円台に急騰です。




独メルケル首相の翻意でEU共同債が現実味

EUの欧州委員会は5/27、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の復興のため7,500億ユーロ(約89兆円)の基金創設を打ち出しました。

日経新聞5/28『EU経済支援 220兆円規模』によれば、6/18のEU首脳会議で承認の青写真を描いています。

EUが5,000億ユーロ分の債券を発行して市場からお金を調達し、被害が大きいイタリアなど南欧に回ります。補助金となるため、返済の必要はありません。残りの2,500億ユーロは融資とする計画です。

大規模な共通債券の発行は史上初めての試みです。

財政規律を重視する倹約4カ国(オランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデン)は既に反対を表明しています。それでも現実味を帯びているのは、ドイツが容認の姿勢にあるからです。5/18の独仏首脳会談で合意した提案に沿って基金は設立のはこびです。

 

2021年秋に退任予定のドイツ・メルケル首相は近年はポピュリズムの波におされ自国主義にのみこまれそうでした。日経新聞6/4『メルケル氏翻意 盟主の志』によれば、欧州統合にもつながる歴史的な一歩を踏み出した背景には、これまで豊かな国から貧しい国への財政移転につながるとかたくなに反対してきたドイツのメルケル首相の翻意があるといいます。コロナ危機への冷静な対処で支持率が昨年12月の31%が今年5月に64%に跳ね上がったことを追い風に、欧州回復がドイツの利益になるという考えを推し進められたようです。

旧西独のブラント元首相が大戦で失った領土を放棄することで東方外交を成功させたこと、コール元首相が通貨マルクを捨てて再統一を実現したことを引き合いにして、「財政規律を棚上げ」の歴史的意義を当記事では強調しています。

 

EUの国際競争力

5/18独仏案では全額が補助金でした。ただ倹約4カ国への配慮から、5/27の欧州委員会の表明では融資も加えた基金となるようです。

補助金と融資の割合で調整が入りそうです。

 

独メルケル首相が補助金にこだわる理由は、日経新聞6/2『EUから競争が消える時』(フィナンシャルタイムズ転載記事)から読み取れます。

そもそもEUでは、加盟国に自国の産業や企業への補助金の提供を禁じているとのことです。単一市場を守るためです。しかし新型コロナの未曽有の危機ではこのスタンスは立ち行かなくなり、最近ではやむおえず各国は補助金を出しています。その結果、ドイツのように豊かな国ばかりが補助金を出しており、自国産業が強くなるばかりです。当記事に掲載されている「欧州委員会が承認した企業への国家補助金」のグラフではドイツが現状では突出していることがわかります。スペインなど一部の加盟国では既に不満を表明しています。

EU基金とすることで、財政が厳しい国へも資金が行き渡る仕組みにしようとの狙いがあるようです。

 

当記事では、中国や米国が補助金を提示して互いに競うことを認めているのに対して、EUは「軍縮条約のように補助金を撤廃する道」をこれまで選んできたと述べています。補助金は、EU内での競争力を衰えさせるのかもしれませんが、米中などとの国際競争においては無視することは難しいのかもしれません。

 

まとめ

6/4欧州中央銀行(ECB)の理事会では追加緩和を決めてユーロ急騰を後押しした格好です。
基金はEUの予算を使うため全会一致が必要のようです。6/18のEU首脳会議で持ち越しとなれば、イケイケドンドンの株式相場の上昇に水を差すのかもしれません。