前回は、元本と取得価額の違いに触れました。
「元本」とは、商品を買うのにつぎ込んだお金です。
「取得価額」とは、商品をいくらで買ったかを示す金額です。法律的には、所得税法で定める「総平均法に準ずる方法」により算出します。
積立、つまり買い続けるだけであれば、元本と取得価額は一致しつづけます。違いを気にする必要がありません。
しかし、一度でも売ると、これまで述べてきたように、元本と取得金額は一致しなくなります。
元本と取得金額が一致しなくなると、自分の資産の状態が妥当なのか、直感的には判断が難しくなってきます。
買いより売りは、難しいです。
売りがわかるようになると、「攻めの運用」に転じることができます。一緒に、がんばりましょう。
では、例題の続きです。これまでに掲載した表に、取得金額を加えます。
日 | 口数 | 元本 | 時価 | 平均取得価額 | 取得金額
0日目 | 4口 | 12万円 | 3万円 | 3万円 | 12万円
1日目 | 10口(6口買) | 24万円 | 2万円 | 2.4万円 | 24万円
2日目 | 4口 (6口売)| 12万円 | 2万円 | 2.4万円 | 9.6万円
はじめ(0日目)は、元本と取得金額がともに12万円で一致します。
ところが、売買をした結果(2日目)、元本はもとのままですが、取得金額は9.6万円と低くなっています。
つまり、「つぎ込んだお金は12万円なのに、実質9.6万円で買えている。2.4万円お得だ。」な状態なのです。
お得だと素直に理解できたら、あなたはスゴイです。
実際には、まだ述べていない評価の情報も、401kサイトには表示されます。
評価に惑わされ、「お得」なんて感覚には到底なれないでしょう。
上の表をよく見てください。
「時価」は、はじめ(0日目)に比べ、1万円下がっています。相場は下降しています。
1口当たりいくらで買ったかを示す「平均取得価額」は、売買の結果(2日目)、2.4万円です。
平均取得価額2.4万円は、時価2万円を上回っています。
つまり、「1口あたり0.4万円高く買ってしまった」状態なわけです。
平均取得価額が時価を上回る状態は、いわゆる赤字(▲印)なのです。
401kサイトをみると、まず、赤字(▲印)が目に飛び込んできます。
「つぎ込んだお金は12万円なのに、実質9.6万円で買えている。2.4万円お得だ。」
なんて感覚は、まず沸いてきません。むしろ、
「つぎ込んだお金は12万円なのに、実質9.6万円でしか買えなかった。2.4万円損した。」
と悲観的に考え始めます。
悲観的になると、人間、現在形で語れる事実を過去形にかえて表現したくなってしまいます。
あなたは、かんり狼狽しているはずです。気を付けてください。
狼狽のあまり諦めの心境に入り、残りの口数も売ってしまわないようにしてください。
もし、残り4口を売ってしまうと、4口×2万円=8万円となります。
これは、当初つぎ込んだ元本12万円に比べ、4万円低い。
「4万円が実費で資産からなくなる」ということなのです。損が確定してしまうのです。
逆に言えば、残りの口数を売らなければ、損が確定していない。
つまり、「チャンスがある」状態なのです。
あなたは、未来形で大いに語れる状態にあるのです。