コロナ禍からの経済再生では、それと引き換えに犠牲にするものがあっても止む負えないと考えがちです。
その一つが環境対策です。コストが割安な化石燃料への需要が高まっても致し方ない納得してしまいそうになります。
しかし”ピンチをチャンスに変えよう”といった発想の「グリーン・リカバリー」が広がりをみせています。
脱炭素対策などの環境施策の強化を通じて経済再生を図ろうとするが欧州連合(EU)を中心に台頭しています。
EUは30年目標を引上げ
日経新聞9/17『EU、温暖化ガス55%削減 2030年目標引き上げ』によれば、EUのフォンダライエン欧州委員長は9/16の一般教書演説の中で、2030年の域内の温暖化ガスの排出量を1990年比で少なくとも55%減らすと表明しました。
パリ協定では産業革命からの気温上昇を2度未満に抑え、できれば1.5度以内にする目標を掲げています。その実現のためEUは2050年の域内の温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を持っています。
一般教書演説で触れられた2030年目標とは、2050年に向けての中間点という位置づけです。当記事によれば中間点での目標を従来の40%減から55%に引き上げます。2018年の排出量が1990年比で20%減というのが現状です。
7月にはEU初の共同債の発行を決めていますが、復興基金7500億ユーロ(約93兆円)のうちその3割をグリーンボンド(環境債)の発行でまかなうとも明らかにしています。
対外圧力が強める
EUは環境対策が十分でない国からの輸入品に関税を課す「国境炭素税」を2023年までに導入する方針としています。排出規制が緩い国で作られた安価な製品の流入による内外価格差を軽減し、税収を上げる狙いがあります。日経新聞9/11『EU炭素税案、日本は警戒』によれば、欧州では脱酸素を巡り日本の姿勢に批判的な見方も多く日本企業が標的になるリスクに警戒しています。
日経新聞9/8『EU「環境で経済再生」先行』によれば、EUはインド、中国に脱炭素の提案をして重要性を説いています。
ドイツでは9/2、インド・太平洋外交の指針(ガイドライン)を閣議決定しています。日経新聞9/9『独、中国依存を転換』によれば、大国の覇権を受け入れず開かれた市場を重視するという文言が含められており、アジア政策の急転回の可能性を示唆しています。
まとめ
これまでのEUは、中国の「一帯一路」に歩み寄るなどアジアの経済成長を取り込むことに力点をおき、環境問題や人権問題では対立を避けてきた感が強かったです。
グリーン・リカバリーによってEUは対外的にも独自色を高めようとしています。英EU離脱での交渉が混迷を深めています。
EUを巡るパワーバランスの変化はなかなかみえずらいですが、株式市場にも波及しそうなのでよくみていきたいとおもいます。