楽天が12/14、携帯キャリア事業への参入を表明しました。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社に次ぐ第4携帯キャリアを目指すこととなります。
表明だけで戦略がみえないので不安です。先週、楽天とともに大手3社の株価は揃って全面安です。
楽天の参入表明
総務省は来年2018年3月に第4世代携帯電話システム(4G)用の新たな周波数(1.7GHz,3.4GHz)の割り当てを計画しています。
2020年からは5Gが待ち構えています。楽天の参入はかねがね専門筋ではウワサになっていたようですが、大手3社が既に設備投資を充実させている4Gの段階での新規参入はサプライズだったようです。
楽天のニュースリリース、
によれば、割当受付開始後に申請すると決めました。
参入の背景として、次を挙げています。
・移動体通信事業を競争的にすることで、その効率性を高め、より低廉で利用し易い携帯電話の料金を実現。消費者を含めた社会全体の便益の最大化を目指す。
・楽天ID数は約1億、『楽天スーパーポイント』の累計発行額は1兆円を超えるなど、強固な経済圏を築いている
・ユーザのモバイルシフトが進んでいる。『楽天モバイル』ブランドで進める事業は、契約者数は現在140万人を超えている。仮想移動体通信事業(MVNO)ではトップシェア。
2019年中のサービス開始を予定しており、1,500万人以上のユーザー獲得を目指すとのことです。2025年までに最大6,000億円の資金調達を想定しています。
絶対的な顧客基盤と培ったノウハウを組み合わせることで事業を推進するとのことで、特に目立った戦略が示されているわけではありません。
株価の反応
携帯キャリア参入表明後から先週末までに(12/14~12/22)、楽天の株価は10%安です。日経新聞12/23『携帯株、宴の終わり』によれば、同じ期間の大手3社の下落率は、
KDDI:12%、
NTTドコモ:7%、
ソフトバンク:4%
でした。その間の日経平均株価は1%高です。楽天参入による収益悪化の思惑から売りが膨らみました。
特にNTTドコモとKDDIです。両社は携帯依存度からの脱却が必要だろうと当記事は警告を発しています。両社はそれぞれ年5,000億円規模を設備投資に充てるが、大半が通信品質の改善に向けた基地局整備の拡充や整備。コンテンツなどの営業利益の貢献度は全体の1割前後とのことです。
楽天は、さきほども述べたように最大6,000億円の資金を用意するとのことで両社の設備投資額には全然かないません。ただコンテンツの面では楽天に勝機があるようみえてきます。当記事によれば両社は「還元マシン」と揶揄されています。株主還元に積極的で設備投資額に迫る規模に膨らんでいることが当記事掲載のグラフからわかります。
ソフトバンクは周知の通り、米携帯大手スプリントや英半導体設計アーム社の買収など海外展開に積極的です。3社の中でも相対的に株価下落は低い結果です。
まとめ
楽天の新規参入表明で、通信品質改善や基地局整備だけで硬直化した携帯キャリア事業に対して、株式市場はネガティブな反応を示しました。
日本企業の積み上げた現金は約100兆円にもなっていると云われます。
投資先がみつからず企業にマネーが吹き溜まる状況が問題となっています。携帯キャリア事業はその典型のように今回の件をみて感じました。
携帯キャリア事業が第4勢力を受け入れられるほどの市場ニーズがあるかは疑問です。総務省はこれまで新規参入を歓迎している様子でしたが、本当に申請を通すかは見えないです。
今回は携帯事業を取り上げました。確定拠出年金の運用をする上でも、さまざまな業種の動向に目を向けてマーケットを観察していきたいと思っています。