座礁したコンテナ船をとらえた上空写真をみたときは驚きました。たった一隻の船が物流の大動脈たるスエズ運河を塞いでしまうのか…。3/23、この時期ならではの強い砂嵐に煽られ視界不良で制御不能に陥り岸壁にぶつかりました。長さ400mほどの船体がめり込む岸辺の土砂を掘削する工機が、映像からは船頭との対比であまりに小さく滑稽にみえました。さいごは満潮の浮力を活かして3/29に離礁に成功しました。
ただでさえコロナ感染による巣篭もり需要の拡大で海運が麻痺している最中の災難でした。世界の要衝スエズ運河での事故もあって、あらためてコンテナ不足の問題が浮き彫りとなっています。
コンテナ輸送はコロナ前から拡大の一途
日経新聞3/31『海上輸送頼る 日本に教訓』によれば、2018年には2000年比でコンテナ輸送量は3.6倍に増えています。とりわけアジア地域(日本を除く)へは4.6倍と急拡大しており、掲載のグラフからは当地域への輸送量が世界に占める割合の半分を占めてきたことがわかります。
輸送量増加にともない船舶の巨大化が進みました。今回の事故は、自然の脅威に晒されての災難とはいえ過度な積載量が操縦不能な事態を招いたようです。
事故前から輸送は混乱
事故発生の当日3/23の日経新聞朝刊でもコンテナ不足と運航スケジュールの混乱を報じてます(『海上コンテナ運賃高止まり』)。事故の直前に書かれたようでスエズ運河には触れられていません。
当記事によればアジア発の米国向けコンテナ輸送量が2月まで7ヶ月連続で前年比2桁増とのことです。例年であれば春節を境に中国発の輸送量が鈍ることが多いが今年は荷動きが活発なままだということです。6月ごろまでに改善すればよいところで、年末商戦に向けた8月からの需要期に突入する最悪のケースもありうるとのことです。
昨年からの米国向け海上輸送の増加はコロナ対策の現金給付による需要増にあるとみられています。3月にもバイデン政権は追加対策を決めましたので、輸送の混乱はさらに高まり長期化するのかもしれません。
まとめ
コロナ感染拡大で一時は極端に落ち込んだ需要の回復と経済対策による需要促進が供給網を逼迫にさせています。米国での寒波、ロシアでのパラジウム鉱山の浸水被害、ルネサス半導体工場の火災と供給網を脅かす事故が相次いでいます。そんな最中に巨大コンテナ船の座礁事故に見舞われウンザリさせられました。。
一方で株式相場は「事故は買い」とばかりに既に高値にある海運銘柄が事故当日は急騰でした。供給不足とうまく付き合っていかなければなりませんね。