金融緩和策の一環として日銀は、TOPIXや日経平均に連動した上場投資信託(ETF)の購入をし続けています。2010年12月から実施され購入枠はしだいに拡大してきました。
とくに2016年7月には年間3兆円→6兆円に2倍に増額され、「毎日が日銀がメインキャスト」感の株式相場となりました。いわば日銀が胴元の相場です。午前中に相場が下がれば午後には日銀が買い付けに動くのがお決まりのパターンとなり、市場は極度の下落を恐れなくなりました。
日銀の購入額は積み上がり、2019年3月末時点では28兆円にもなっています。日銀が大株主という上場企業が当たり前になってきて流動性は枯渇に向かっています。
ETF貸付制度を来春導入へ
債券と違って株式は償還がないため、いちど購入すれば日銀の保有資産であり続けます。資産を減らすには売却するしかありません。
日銀にどっぷり依存している株式市場は、日銀が売却をチラつかせるだけでも大混乱です。
これ以上のETF購入枠拡大には市場のゆがみをもたらし副作用ばかりが懸念される状況にある日銀は、4月の金融政策決定会合で「ETF貸付制度の導入」の構想を打ち出しました。
まだ構想段階ですが、折しも10月金融政策決定会合が開催中の10/30、日経新聞は『日銀、ETF貸し出しへ』なる記事を出しました。会合での議論を催促しているかにみえるタイミングでの記事です。当記事によれば、証券会社に一時的にETFを貸し出す制度を来春にもはじめるとのことです。
現状では、証券会社など値付け業者は現物株を調達するのに時間がかかるため、投資家の売買に備えて「在庫」として一定量のETFを保有しておく必要があります。しかし価格変動に備えて在庫には限りがあり大型の注文に対応できていない実態があるようです。
そこで、日銀が保有するETFを値付け業者に貸付をできるようになれば大型の注文にも対応しやすくなるというのです。
日銀は証券会社など値付け業者にETFを貸し付け、業者は貸出料を日銀に支払います。「在庫」が潤うことで市中での流動性が高められると期待されています。
当記事によれば、原案では貸し出す際に実施する入札頻度は月1回と少なく、関係者からは使い勝手が悪いとの指摘が出ているのが現時点の状況のようです。
まとめ
日銀がETFの貸出料を操作するのが重点策となる時代が来るのでしょうか。議決権が行使されることなく日銀に吹き溜まったETFの貸し出しが膨らめば、株式は債券とさほど違いがない存在と変わっていくのかもしれません。保有は日銀であっても、実質的には投資家が保有しているという妙な状況が当たり前になるのかもしれません。
後日談2020/06/20:
コロナショックによる追加緩和策として、日銀のETF購入目標は年間12兆円に引き上げられています。ETF貸付は6/12より開始されましたが初日はたったの5,000万円の利用額でした。日銀が大量購入しているのに、わざわざ借りてにまわる金融機関は皆無といった状況です。貸し手も借り手もゆるゆる、ぬるま湯の極み。。
よくよく考えれば不思議なことに、日本では中央銀行が株式(ETF)を購入してる。
さらにはなんと‼️「貸付」を6/12開始、
議決権が行使されるでもなく流動性を高める狙い。日銀が年間12兆円購入のなか、わざわざ借り手にまわる金融機関は皆無のようだ。
ぬるま湯の極み。。https://t.co/rvHMEON9lW
— いんとく (@kab_suke) June 19, 2020