新興国などで銀行口座を持たない人達でも容易にお金を送金・流通できる仕組み「金融包摂」はこれまでも実現が期待されてきました。
その期待を担ってきたビットコインは2017年のバブルとその崩壊で信用を失いつつあります。そのほかの仮想通貨も勢いを増し乱立状態です。
セキュリティの面でも不安が収まる気配はありません。2014年のマウントゴックスでの約450億円の消失で大騒ぎして以来、つい先日7/12にも仮想通貨交換所ビットポイントから約35億円が流出しています。日経新聞7/21『仮想通貨 やまぬ流出』によれば、今年1〜3月は世界で1,300億円の被害があったとのことです。
「フィンテック」って言葉もあまり聞かなくなりました。私はビットフライヤーに口座は作ったものの使わずじまいです。
そんなさなか、世界で27億人の利用が見込まれる「リブラ」の構想が突如として現れました。
リブラ構想
米フェイスブックは6/18、「リブラ」と呼ぶ仮想通貨(暗号資産)を使った金融サービスを2020年に開始すると表明しました(日経新聞6/19『フェイスブックが仮想通貨』)。スマートフォンを介して利用者間で送金したり、買い物の決済に利用したりすることを想定しています。
リブラを発行する組織にはマスターカードやビザが名を連ね、配車サービスのウーバーなども参加します。フェイスブックとしては手薄だった新興国を開拓する利点があると当記事は伝えます。
これまでに普及してきた仮想通貨とリブラが異なるのは、裏付け資産がある点です。ドルやユーロなどの法定通貨を裏付けにします。これからの通貨と一定比率を交換できる「ステーブル(安定)コイン」であることから価格の乱高下が起きにくく、投機目的の利用を抑制できそうです。送金や決済に特化した利用が期待されます。
27億人が利用、夢物語すっとばし現実的な課題に矛先が
ここのところ個人情報の取り扱いをめぐって問題続きのフェイスブックが発表した構想とあって、発表当初は不安の矛先は当社に集中するのだろうと漠然とおもっていました。実際、7/16には当社傘下の企業CEOが米上院公聴会に呼び出されています。
ただ、発表からの動きをみていると、通貨に対する”そもそも”論に矛先が向いています。発表直後6/28・29の大阪G20と並行開催のV20(仮想通貨サービスプロバイダ会議)で議論が取り交わされました。7/17・18開催のG7財務省・中央銀行総裁会議では正式に議論されました。
日経新聞7/19『リブラ、通貨秩序問う』によれば、「最高水準の規制を満たす必要がある」と議長総括に明記されました。米国は自国発のリブラに国際規制づくりを要求しています。信用力が低い自国通貨には目を向けず銀行預金が激減したり、貯金を使った企業への貸し出しも減って経済が大幅に悪化、ハイパーインフレが進み国民生活も困窮する、といったシーンを当記事では述べています。マネーロンダリングも懸念されます。
まとめ
世界で27億人もの人達が利用できる通貨が突如として現れることから、現実的な懸念が一気に噴き出しています。金融当局からの警戒感にまずは圧倒されている状況です。今後の動きに注目していきたいとおもいます。