売り買いの概念を希薄だと何がまずいのか。
年金運用は、積立運用が基本です。その代表的な手法が、ドルコスト平均法でしょう。
ドルコスト平均法による運用では、毎月同額の拠出で、高値では口数が少なく安値では多くの口数を獲得していきます。はじめに商品と拠出額をきめれば、その後は自動的に取得していきます。
「買い」の概念による運用です。
401k(確定拠出年金)の普及を推進する国や金融関係者は、ドルコスト平均法のような、いわば「買い」の概念は熱心に説いても、「売り」の概念には口を閉ざしてしまいます。
国や金融、機関投資家だけでなく、国民一人ひとりがもっとリスク資産を買い支えてほしいという願いが背景にあります。買い支えです。買い支えてくれれば、資産価値が安定すると考えるわけです。
「売り」の技術が積極的に論じられない背景には、資産の「買い支え」を国民に求めていることがあります。その点は、まず忘れないでおいてほしいです。
したがって、なんとなく運用していると、「買い」の行為ばかりに終始し、「売り」の発想が生まれてこない。「売り」の行為は、「よくわからない」だとか、「やってはいけないこと」、「怖いもの」と捉えられてしまうわけです。
売り買いの概念が希薄であることの害悪とは、こうしたことです。
一つ、ここで注意です。
私は、「買い支え」が悪いと言っているわけではありません。むしろ、推奨するスタンスです。
では、何を言おうとしているのか。それは、
買い支えつつ保有する資産の「部分」を売り買いすべきだ、
と主張したいのです。
なにも、デイトレーダになってほしいわけではありません。
含み益が出ているのが分かっているのに、知識がないために「売り」ができないのは残念です。売って得た収益は、相場が下がれば買いに還元され、長い目で見れば「買い支え」に繋がるわけです。