NY原油17ドル台は2001年以来、減産でも貯蔵追いつかず

新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の移動を極端に制限することで欧米ではようやくペースが落ちてきました。
日本では4/16、緊急事態宣言が7都府県から全国へと範囲を広げ危機感はさらに高まっています。

株式市場は、直近の経済対策・財政出動で3月前半の危機からひとまず脱出しました。
3月のパニックが落ち着きほっとしています。ただ、実体経済と乖離して動く相場となっているので、あらたな下落局面を株式相場の動きから読み取るのは難しくなったということでもあります。

感染拡大は世界の需要を強制的に奪いました。その実態を如実に現すのは原油でしょう。
原油には経済対策・財政出動の支援がありません。経済の深刻度合いを示す指標として行方を見守っています。




OPECプラスは協調減産にようやく合意

3月前半の株式市場の暴落は、新型コロナウイルスとともに原油が追い打ちをかけました。
3/5~6にかけてのOPECプラスは感染拡大による原油の需要減への対抗策として日量210万バレルの協調維持とさらなる減産を協議しましましたが、サウジアラビアとロシアの思惑が埋められず決裂しました。日経新聞3/8『サウジ、一転石油増産へ 協調決裂でシェア重視に転換』によれば非公式ながらサウジアラビアは生産能力いっぱいにまでの増産を4月からはじめる可能性を示唆しました。
これを受けて週明け3/9の株式市場はパニック、NYダウはサーキットブレーカーが発動する事態に陥りました。
新型コロナウイルスの猛威は止まりません。シェールオイルの直撃で大統領選に影響しかねないも米国からの働きかけで協議は再開され、4/14、3月で争った量をはるかに超える日量970万バレルで合意にいたりました。日経新聞4/13『産油国の価格競争休戦』によれば世界生産の1割に当たる量で、ロシアはサウジの現在の生産量に匹敵するほどの規模です。米国も減産する前提ではあります。実際には米国は戦略備蓄を積み増すことで減産相当のことをするようですがはっきりしません。民間企業であるシェールオイル採掘企業に米国が減産を要請することは難しいようです。

それでも足りない減産

新型コロナウイルスによる原油の需要減は、日量970万バレルでは全然足りないようです。4/17、WTI先物の期近物(限月5月)は17ドル台を2001年以来つけました。
日経新聞4/18『原油、下値不安なお』によれば、国際エネルギー機関(IEA)の月報では4~9月の世界の需要が前年同期比で2,310万バレル減ると見込まれていると伝えています。そして余剰となった原油を備蓄できなくなる心配さえ浮上しています。当記事によれば米国の備蓄拠点クッシングの在庫が直近1ヵ月で4割を上回る急増で、今のペースで増えれば1ヵ月半で許容量を超えるとのことです。在庫コストが割り増される期先物(限月6月)は25ドル台で期近物との価格差の乖離が進んでいる様子が当記事のグラフで示されています。

 

後日談4/20:

限月による価格差は、ブルムバーグのこの記事のグラフのほうがわかりやすいです。コンタンゴが異常です。
WTI原油先物が11ドル割れ、需要低迷で貯蔵施設能力が限界に近づく

原油貯蔵スペースがないため現物の受け渡しを避けようと、トレーダーらは21日の期日を前に5月限から6月限へと乗り換える動きを進めている。

それにしてもマイナスの価格が発生しそうなとんでもない事態です。5月物の期日は5/21。

 

後日談4/22:

4/20、本当にマイナスを記録しました。マイナス40ドルを突っ切ってしまった。。

マイナス40ドル歴史的急落のNY原油-需要減で貯蔵限界、限月要因も

 

 

まとめ

日経新聞4/9『オイルマネー、流出懸念』によれば、産油国の政府系ファンド(SWF)が世界で25兆円規模の株式売却もありうるとの見方を示してます。

4/2にはシェール企業が経営破綻しています。シェール企業を支える低格付け債の崩壊も懸念されます。

原油の動きから目を離せません。