ひずむコンビニ24時間営業、移動販売の芽

東大阪市のセブンイレブン店オーナーが24時間営業をやめたことで本部から契約解除を迫られた件がきっかけで、コンビニ業界は存在のあり方が問われる大きな話題に発展しています。

 

当オーナーが運営するフランチャイズ店は、2月までの8ヶ月間で13人のアルバイトが辞めてしまったことで人手不足に陥り、午前6時から翌午前1時までの19時間営業に変えました。これに対してセブンイレブン本部は、契約解除と違約金の支払いの可能性を示していました。

※3/15になって本部が契約解除と違約金の支払いを求めないことが当オーナーの口から明らかになりました(日経新聞『セブン、契約解除求めず』)。

夜中の営業を停止したって私は困りません。一般の利用者にアンケートをとれば営業時間短縮に困らないと答える人が大半ではないかとおもいます。ただ、24時間営業はブランド価値でもあります。私は困りはしませんが、寂しさは感じます。夜中にコンビニの明かりをみるとホッとします。地域社会としても防犯としての役割は期待されています。

 

誰もが意識を変える必要に迫られています。

営業時間短縮の報道が目につく中でひっそりと、セブンイレブンが移動販売をはじめたというニュースを東京・首都圏経済欄に見つけました。

「移動販売に活路を見出す」といった考えは今後出ても不思議ではありません。




ひずむ24時間営業

セブンイレブンは 24時間体制を崩さない方針には変わりありません。ただし営業時間短縮の実験は行うと表明しました。実験対象店を本部直営店で行うと当初述べました。しかしもはや世論の批判は強く、加盟店を加えた実験に拡張します。

 

日経新聞3/7『24時間 譲れぬセブン』によれば、フランチャイズ店(FC店)方式をとるコンビニエンスストアは独自の会計方式をとっています。売上高から商品原価を差し引いた粗利を出します。その粗利を本部と加盟店が分け合います。

この方式をとっていると、人件費はFC店が負担することになります。近頃は人件費の上昇で加盟店側の業績を圧迫する要因となっています。セブンイレブンの営業利益率が約3割にもうなる高収益体質にあるのはこの独自の会計方式のためだと当記事は伝えます。加盟店オーナー側は潜在的に不満を募らせています。

 

仮に全店で24時間営業を止めた場合のアナリスト試算が、日経新聞3/14『セブン、営業益1割減』に記事となっています。午前0時〜6時までを閉店すると、客足が減るマイナス要因とコスト減のプラス要因を上すると約1割の営業利益が減少すると試算しています。

コンビニの多くの商品を入荷し陳列しています。そのため深夜営業を止めても、陳列作業の人件費は日中に発生することになります。 24時間営業をやめることができる制度となっても、実際に止める加盟店はわずかではないかとの見方をするアナリストもいるようです。

 

労働問題を管轄する厚生省は、コンビニオーナーの労使上の立場について初めて判断をしました。日経新聞3/15『コンビニ店主団公認めず』によれば、厚生労働省は、コンビニオーナーは労働者ではなく独立した事業者であり、団体交渉権は認めないとの立場を示しました。

労働法制ではなく下請法や独占禁止法など他の法律で一定程度守られていると判断したようです。もちろんオーナーらで作られる組合は不服申し立てをするようです。

 

24時間営業の見直し議論は、セブンイレブンでの実験結果を受け今後さらに高まっていくと思います。

移動販売の芽

日経新聞3/8『セブン移動販売 光が丘で拡大』によれば、東京都と練馬区はセブンイレブンと組んで、同区光が丘の都営住宅団地でコンビニエンスストアの移動販売をはじめたとのことです。高齢者を中心に買い物の不便さを解消する試みです。

これまでにも販売網の拡大にセブン&アイHDは力を入れてきました。ネットで予約したものを実店舗で受け取れるなどの販売チャネル「オムニ7」を2015年に開始しました。弁当などの食材配達サービス「セブンミール」を手掛けたりもしています。これらの取り組みはパッとしていません。アマゾンに押され気味です。移動販売だって地味なサービスにとどまるのかもしれません。

そうはいっても移動販売は、「実店舗での買い物気分」を味わえる点で高齢世代を中心にウケが期待できそうです。過疎化対策の一環として練馬区に限らず他の行政にも強く響きそうです。私の子供の頃は豆腐屋の移動販売車が演歌を流しながらやってきました。豆腐に限らず卵や野菜などもこうした移動販売で買いました。買いに来た大人たちは立ち話をはじめたりしてちょっとしたコミュニティの場と化します。移動販売には、サーカスがやって来たような魅力があります。

それにMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)に注目が集まる昨今です。移動する車の動きがモバイル端末上の地図で確認できるプラットフォームが整備され、移動販売は身近な存在になりそうです。
自動レジの浸透で実店舗は省力化に進み移動販売にパワーをシフトする、何年先かわからない妄想に近いイメージが頭をよぎります。

 

まとめ

日本ほど便利な国はありません。働き方改革で労働時間の短縮が国を挙げて進められている今日の状況では、24時間営業という考え方は歪みがどんどん広がりそうです。 24時間営業の極みともいえる存在のセブンイレブンが営業時間短縮の方向へ向かうなら、他の業種も含めた影響ははかりきれません。