西風強く、液化天然ガス(LNG)

確定拠出年金を毎日触るなんてことをしていると、日経平均だとかNYダウといった株式相場の動向はいつも気になります。ただ、株式相場はどうしても先進国の指数に関心が集まるので、幅広く世界の動向を知りたいとおもうとコモディティ(金や原油などの商品市場)に目が向かいます。コモディティは、新興国や資源国がトリガーとなって動く局面が多いので、興味が尽きません。

ぱそたく

今回はLNG(液化天然ガス)です。

LNGは石油、石炭に比べて二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)の排出量は少なく、硫黄酸化物(SOx)は排出ゼロだといわれクリーンエネルギーとされています。

日経新聞3/8『LNG取引、新興国も活発』によれば、2018〜35年のエネルギー需要の増加に占めるLNGの割合は4割を超え、再生可能エネルギーの3割を大きく引き離しています。それ以下は、原油、原子力、石炭、その他と当記事掲載のグラフからわかります。

日本は長らくLNGの最大輸入国でした。しかし大気汚染が深刻な中国にもうすぐ追い越されているとみられています。その中国は、米国との貿易摩擦悪化により米国産LNGに対して昨年2018年に関税を引き上げました。

中国に阻まれた米国LNGは西へと向かい始めました。世界最大のLNG輸出国のロシアは西への勢力拡大を狙っています。LNGのトレンドは西風です。




米国は欧州へ、ロシアはアジアへ

ロシアはドイツにLNGを送るパイプラインを建設する計画を進めています(ノルドストリーム2)。これまで米国は北大西洋条約機構(NATO)首脳会談の場などで、安全保障上の理由からパイプライン建設に反対してきました。

日経新聞3/29『米産LNG、欧州に照準』によれば、どうもその内情は米国産LNGの欧州への輸出拡大にあるようです。米国はLNGプラントが相次いで完成しました。欧州への販路を狙っています。ロシアは欧州で販売を減らした分を取り返すためアジア市場を狙うと、当記事では識者のコメントを紹介しています。

ロシアは北極海でのLNG開発を進めています。2/20日経新聞1面トップ『ロシアガス大手 出資要請』によれば、ロシアのガス大手ノバテクが三菱商事と三井物産に北極圏でのLNGプラント建設アークティック2への出資を打診されていることが明らかになりました。ガスプロムが2009年から輸出をはじめたサハリン2とは別のあらたな開発で、2022~23年に生産開始を予定しています。ロシアとしては日本を拠点としたアジアへの輸出を図っています。日ロ関係の正常化や調達先の多様化の点から日本政府はやる気を見せているようです。ただ、クリミア問題が解決していない最中で国際社会が反発する恐れもあります。

 

まとめ

北極圏ルートは中国が先行しています。3/28日経新聞『「北極LNG」視線はアジア』によれば、サウジアラビアがロシアに接近しています。

日本が蓄積してきたLNG運搬船の造船技術も危機です。韓国、中国の台頭で受注が減っています。3/20日経新聞『川重、中国でLNG船検討』によれば、日本は造船所の規模が小さく、人件費も高いことから、海外シフトが加速しています。

日本でのLNG先物市場創設の検討も経ち切れになっています。最大の消費国である日本が主導権を取れない状況が懸念されています。

後日談3/31:
日経新聞3/31『米中摩擦、モノの流れ一変』によれば、米国産LNGは18年9月からの中国が課した10%関税以降、12月の対中輸出は前年同月比8割減、年間でみても9%減でした。中国はオーストリアからの輸入を増やしています。