ワクチン外交、特許放棄巡り混乱

インドでの新型コロナ感染拡大の勢いが止まりません。酸素ボンベを奪い合う様子、火葬場の絶えない炎を報道でみるにつけ胸を痛めます。。
1日あたりの感染者数が昨年9月に10万人付近でピークをつけたのを境に2月には1万人台にまで急速に低下しました。急減の要因はよくわかりませんでしたが安堵の感を持っていました。
ところがその後前波をはるかに超える波が押し寄せ40万人を超えて悪化の一途です。今、インドで広がる変異種が世界各国に飛び火するのではと危惧されています。

インドでの再拡大の一因としてワクチン接種の遅れが指摘されています。ワクチン輸出国であったはずのインドは感染急拡大で自国の対応で逼迫し一転、輸入を必要とする事態に追い込まれています。
欧米ではワクチン接種が進み感染が落ち着きをみせてきており、インドはじめ新興国へのワクチン供給ができる状況となってきました。




ワクチン外交、特許放棄巡り混乱

米国は5/5、これまでの慎重姿勢から転じて特許権の一時放棄を支持すると表明しました。日経新聞5/7『供給増へ WTOで交渉』によれば、エイズなどの感染症が蔓延しているのに、欧米が特許を持つ治療薬の価格が高すぎて、途上国で治療が受けられない問題が深刻化しています。WTOは国家の緊急事態時には特許権者の許可なく特許技術を使える「強制実施権」を認めており、米国はコロナワクチンに対しての強制実施権を支持しました。

欧州は足並みが揃いません。日経新聞5/8『特許放棄 欧州で温度差』によればメルケル政権下のドイツは特許一時放棄に反対する考えを示しました。ワクチン製造を妨げているのは、生産能力と高い品質水準の問題であって特許ではないといいます。既に欧州は輸出に力を入れているのに米国などが輸出を制限してきたことへの不満のあらわれのようです。ただフランスは賛成の意を示しており、欧州は一枚岩ではありません。

ワクチン外交では中国、ロシアが先行しています。ただ、日経新聞5/8『中国のワクチン外交、後退も』によれば中国国内で消費が見込まれる量は決して十分ではなく、米欧製求める傾向が強まれば中国のワクチン外交が後退するのではないかとの見方を示しています。

まとめ

日本は輸入に頼り接種が一向に進んでいません。5/7の首相会見では1日100万回の接種目標を掲げましたが、これまでのPCR検査の実施状況をみても本当に可能な数字か懐疑的です。日本国内をみていても世界の潮流は見えてきません。
昨年の株式相場はワクチン開発で沸きました。現在は開発したワクチンをいかに流通させるかにシフトしてきており、ワクチン外交が円滑に進まなければ皺寄せは株式相場にも現れそうです。