踏んだり蹴ったり…ソフトバンクG

12/19の通信子会社上場を前にして、踏んだり蹴ったりのソフトバンクグループ(SBG)。12/6には大規模通信障害が起きたり、関係が深い中国ファーウェイ(華為技術)のCFOの逮捕が明らかになったり、悪材料が噴出しています。10月にはサウジ記者失踪事件で、サウジアラビアと共同出資するいわゆる「10兆円ファンド」のブランドイメージは悪くなっています。

8月の菅官房長官の「携帯電話料金は4割程度下げる余地がある」発言に端を発し、通信大手3社は値下げ合戦を余儀なくされており、上場のタイミングは決して良くありません。

 

12/9日曜日の日経新聞は1面トップは『ソフトバンクの実像〜異形の「利益日本一」』です。投資会社としての色合いを強めているこの企業は日本では異形です。毎日みている日経平均株価は、この一企業の寄与度に大きく影響を受けています。たとえば12/6の417.71円安のうち、およそ1/8にあたる約53円がSBGによるものでした。異形でよくわからないからといって、これほど影響力を持つ企業を何も知らずにいるわけにはいきません。この企業のことを少し勉強したいとおもいます。




コングロマリット・ディスカウント

業態が多角化していると投資家からみて業績の良し悪しが把握しづらくなります。「把握しづらい」分だけ株価が割り引かれてしまうことはコングロマリット・ディスカウントと呼ばれています。

その代表格がSBGです。今回の子会社上場の目的には、コングロマリット・ディスカウントの解消があります。当記事によれば、約10兆円の時価総額は、このディスカウントがなければ約22兆円であってもおかしくないようです。

SBGが保有する主な株式が当記事に図示されています。

連結子会社:ソフトバンク(7.1兆円)、ヤフー(0.7兆円)、スプリント(2.4兆円)、アーム(2.7兆円)

出資:アリババ(11.2兆円)、ウーバー(0.9兆円)、滴滴(0.4兆円)

約3割出資(ビジョンファンド):半導体のエヌビディア、シェアオフィスのウィーワーク、ホテル運営のOYOなど計38社に1.5兆円

営業利益

営業利益の内訳が、同日3面の『きょうのことば』欄でふれられています。本業の稼ぐ力を示す営業利益の主な源泉は国内通信事業と投資ファンド事業です。2018年4〜9月期は国内通信4469億円に対して投資ファンドが6324億円となり、以前の期に比べて飛躍的に投資ファンド事業への依存度を高めていることがわかります。

1面トップ記事によれば、2018年4〜9月期の営業利益はトヨタをも上回っています。しかし、「質」は大きく異なるようです。営業キャッシュフローはトヨタの半分以下とのことです。SBGの営業利益は、投資先の企業価値を四半期ごとに評価し値上がり分「未実現評価益」に大きく依存しているとのことです。営業利益の約4割弱がアリババの値上がり分で占めているようです。デリバティブ取引をかませることで、来期もすでに1兆円の利益が「予約済み」とのことです。

 

まとめ

SBGの企業評価は、営業利益というよりは負債の健全性で評価されています。当記事によれば、純有利子負債を保有株式の時価で割った「負債カバー率」が35%に収まっているかが重視されています。株価が半減しても70%なので、めいっぱいの100%には余裕もあり一定の評価ができるとのことです。でも、35%基準に急速に近づいているようです。サウジアラビアとのファンドでは年7%で額にして3,000億円強の利払い負担があるとも記されており不安もよぎります。

かのバフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイのような投資会社とイメージすればよいのでしょうか?孫正義氏の顔ばかりが目について、この企業の是非は現状の私にはよくわかりません。記事に書かれていた事柄を書くに留めておきます。